ほぼ黒ワンピース生活

ほぼ毎日黒のワンピースを着ています。考えたことなどあれこれと。

山崎明子「『ものづくり』のジェンダー格差」を読みました

山崎明子「『ものづくり』のジェンダー格差 フェミナイズされた手仕事の言説をめぐって」を読んだ感想です。

 

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ジェンダー格差について関心のある方、

ハンドメイドに関心のある方、おすすめです。

 

 

最寄りの図書館ではジェンダー関連の新しい書籍が居並んでおり、市の方の意識の高さに関心しつつ、ジェンダー関連の書籍もにょきにょき出てきてるな~いいぞいいぞ、と眺めておるのですが、「ものづくり」のジェンダー格差に言及している本は初めて見ました。んで借りました。んで読みました。すごかった

 

手仕事をめぐる言説に隠されたジェンダー構造を明らかにする画期的研究

人々の関心を集めながらも、社会の傍流へ追いやられる手仕事がある。そんな「やりがいのあるものづくり」が奨励されるとき、その言説にはジェンダーの問題が潜んでいるのではないか。学校での家庭科、戦時下における針仕事の動員、戦後の手芸ブーム、伝統工芸における女性職人、刑務所での工芸品作りなど、趣味以上・労働未満の創作活動を支えている、フェミナイズ(女性化)する言説を探る。

「多くの女性化された創造活動は、それが「仕事」であっても、「家庭」と結びつけられやすく、またその語りは「楽しさ」や「やりがい」など、自己啓発的な言葉に満ちている。そして女性化された仕事は、今日、グローバルに組織されたものづくりの現場に広がっている。そこには、「女性」だけでなく、移民、女性化された男性、そしてその子どもたちも含まれ、家父長的な家族観がまだ強く、労働のための法やその準備のための教育が十分に確立していない社会では、こうした家父長的な構造を容易に利用できてしまうのだ。近代家族の中で女性たちが行ってきた仕事は、より女性化された人々に移譲され、消費者となった女性たちには移譲の現実が不可視化されている。この問題は、今を生きる私たちにとって、決して他人事ではないはずだ。」(本書より)

--- Amazon書籍紹介ページより引用

 

歴史的に、ものづくり、特に裁縫や編み物などは女性の仕事となっており、その流れは連綿と続き、春先になるといわゆる「袋物」の製作を依願されし女性たちの阿鼻叫喚に続いている。

 

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うちがお世話になった施設は特段の指定はなかったものの、なんか作るか、ということで子どもたちのコップ袋は作った。とてもお気に入りでずっと使っている。自発的に作ったものの耐用性は高く、お気に入りコンテンツを詰め詰めしたので愛着もすごい。

運よく一定程度のセンスと技能があったからできたことだけど、周りの方には「そんなことできない」とギブアップな方も多いと分かっている。そしてそれに「私が作りましょっか?」とお世話を焼きたくなってしまう気持ちも禁じ得ないものだった。

女性同士の互助の精神っていうのかな。それもやっぱり、ものづくりを女性の中で回し、回りまわって「女性ならできるでしょ?」の軽視につながっているんだった。

あ~あ、私たち何してんだろ、という思いもガツンと文章になっていた。

 

この本でもって「ものづくり」を軽視してくる輩を殴って可ということにしてほしい。カドでいきますカドで。

 

終章に近くなり、主婦のハンドメイドの話しになる。

主婦のハンドメイドが流行って久しく、私自身も「作家さん」の手仕事が好きであれこれ購入していて、作家さんとの交流も良く、ああハンドメイドが好きだなぁと思っている。

でも「作家さん」がそんなに稼げる職業でもないとも分かっているし(個人事業主をやって知った知識総動員、

作家さん自身も「そこまで頑張らなくていいし…」とバリバリ稼ぐ方向を向いていない人が多い。

とても素敵なフェルト作品を作る方がいらして、いくつも作品を迎えさせていただいたのだけど「フェルトは冬しかやらないんです。春からはお休みで」とたいそうマイペースであられた。

 

作家さんはたいてい女性で、女性ならでは()のきめ細かな()温かみのある手仕事()が全面に押し出されており、そういうジャンルが好きならそういうジャンルを好きでどんどんお金を落としたらいいのだけど、売り手側が「そこまで頑張らなくていいし」の考えだとこちらのお財布も「そうですか…」と閉じてしまう

 

ジェンダーの目線で見たら…

やっぱりこれも格差の縮図…

 

女性の仕事は低く見られる、いつものこと。

どうせ旦那さんが稼いでるでしょ、の意識で安く見積られ。

女性が何かアクションすると現れるその辺りの掛け算。よく見るやつ。まさかのハンドメイドにもこういったジェンダー格差が顕れるとは。

 

この本を読んで私はどうするーということで結びますと、

これまでと同様にハンドメイド作家さんの仕事を高く評価し、気に入ったものは購入させて頂いて、あなたの作るものが好きです、と延々愛を語る。

そしてハンドメイドや工業製品・既製品にも一層の敬意を払う。

更には今身の回りにあるものを大事に使う。

 

今すぐに「ものづくり」のジェンダー格差はなくなるものではないけど、一つ一つの手作りが評価され尊重され、そして大事にされることを願う。

 

ジェンダー格差について関心のある方、

ハンドメイドに関心のある方、おすすめです。