生活上の困りごとのひとつに耐え兼ねて、配偶者に離婚を申し出た。あれこれの事案はどこそこで係属中ですが、ここに思いを書き留めておきたい。
※性暴力加害・被害の描写を含みます。ブラウザを閉じる等、お心を守る行動をお勧めします。
「毎日でもセックスがしたい」
と配偶者から言われ、応じかねることが多かった。
家事も育児もほぼワンオペで、自分の仕事もしたいし休息も取りたいのに、背後から抱き着かれて腰を振られ、勃起した陰茎を身体にすりつけられる、胸を揉まれる、尻を触られる、無理やりにもキスされる、手を引っ張られ勃起した陰茎を触らせられる、ときには舐めさせられる、寝ているところに挿入されていたときもあったし、普通の会話をしていても「このビッチが」と言われ、生理出血を理由に性交を断ると「口があるだろ」と言われ、口も口内炎が酷く対応できない、と言うと「手があるだろ」「尻があるだろ」としつこく付きまとわれ、最終的には「恥をかかせやがって」と夫が寝室を出ていく。そんな毎日だった
世の中そんなことをされているお妻の立場の人も多いのだろう。それぞれで我慢をなさっているんだろう。そう思っていたのだけども、そうではないと知って己の心がバリバリと割れ落ちる音が聞こえた。
「本当に私は少数派なのか」不安になったので改めて調べてみると、内閣府が良いデータを出していた。
ここの II 2. 配偶者からの暴力の被害経験 を読む。
図2-1-1 性的強要を「何度もあった」と回答している人の割合は、女性1.9%。
--- II 2. 配偶者からの暴力の被害経験 より
1.9%、じゃあ他の、98.1%のおうちでは、無理やり陰茎触らされたり、このビッチがとか罵られたり、寝ている間に犯されたり、肛門姦の強要をされたり、それらを何度も何度も、毎日毎日、毎朝毎夕、それこそ四六時中受けて「いない」んだ。
「私っていったい何なんだろう」
疑問が自分に及ぶ。ただ単純に、性欲バカに付き合ってるだけだと思っていたが、暴力の被害者で、しかもたったの1.9%の「何度も被害を受けた」の数字の中の人だった。
信じられない、よそのお家もそうなんだと思っていたのに。よそのおうちはもっと健康的な夫婦のやり取りがあるだ。
もしかしたら私も、いつ陰茎を擦り付けられるか分からずビクビクするようなこともなく、ただ愛情あふれる夫婦関係の妻の方だったかもしれないんだ。
なんだ…
そう、だったんだ…
これまでも3度は離婚の申し出をした。
そのたびに「でも離婚したら、困窮するし」「子どもたちから父親を奪うことになってしまう…」「我慢すれば、なんとかなる」そう思っていた。自分を殺していた。
だけど気づいた。
私は、私を蔑ろにしていた。
私は、私を大事にしていなかった。
だから、もう、
「私は『私を大事に』したい」
「私は『私を大事に』する」
そう決めたらもう行動するだけだった。
以前から相談電話をつないでいた女性暴力相談支援センターに電話をし「一時保護」の依頼をした。自分の医療証や年金証書、通帳をまとめ、子どもたちの身分証や医療証、通帳などをひとまとめにし、最低限の生活に必要なものをスーツケースに詰め、子どもたちの手を引いて家を出た。
この顛末はまた別でお話しするとして、今は子どもたちと帰宅し、夫とは離婚について話し合い、離婚も別居も合意に至らず。
先方は「家では極力顔を合わせないようにするから」と言い、双方が家庭内別居に努めて今に至る。
見た目は普通の家庭生活に戻った。
食事を作り、食器を片づける。
スポンジで食器をこする。もう少しで汚れがスッキリしそうだ。少し力を入れる。
ふと、
「これも愛情なんだ」と気づく。
食器一つ、綺麗に洗って乾かして、次に使うときに備えて、整える。
貴方は知らないかな。私の家事も、貴方への愛情なんだよ。何も性交だけが愛情ってわけじゃないんだよ。
服を干して、お皿を洗って、掃除機をかけて、窓を開けて換気して、スーパーに行って好みのものを買ってきて、運んで、冷蔵庫や冷凍庫に入れて、
毎日毎日、貴方を愛していたんだよ。
だけど、貴方は性交が全てだと思っていたのかもしれないね。性交に応じないから、物足りなかったかもしれないね。
繰り返すね。私はずっと愛情を示していたんだよ。愛していたんだけど。
もう貴方に感じる感情の色は黒っぽいものしかなくて。繰り返し受けた性的な暴力が、怖い、それを私にした貴方が憎い、だからもう一緒には暮らせない。同じ姓も名乗らない。
私はもう別の人間になる。
自分を大事にしなかった過去の自分とも別れ、離れたい。
新しい人生を歩む。子どもたちは任せて欲しい。それで大丈夫だから。
これだけは知っておいて。
愛情ってね、それだけじゃないんだよ。